トレーニング

肋骨を締めるとは?その意味と体への影響について解説

大内翔太

横浜湘南エリアで活動する理学療法士・パーソナルトレーナーです。 整形外科クリニックとジェクサー横浜で活動中。 リハビリテーション、コンディショニングを専門に行っています。 痛み、姿勢、歩行などの改善に関してはご相談ください。

腹囲

ピラティスのレッスンで肋骨を締めると良いと聞きました。肋骨を締めるってどういうことですか?

本記事ではこのようなお悩みに答えます。

結論から言いますと、肋骨を締めるというのはリブフレアという肋骨が開いている状態を戻すことを指します。肋骨が開くことでスウェイバックやロードシスと呼ばれる不良姿勢になる可能性が高まります。そのため不良姿勢の予防や改善のために肋骨を締めるのは重要となるのです。

筆者は整形外科クリニックとスポーツジムで勤務している理学療法士×パーソナルトレーナーです。日常的に医学的な知識や健康、トレーニングに関する知識を利用し指導しています。

肋骨の構造と機能

肋骨の構造

肋骨は胸郭のなかの一部です。この胸郭というのは脊椎・胸骨・肋骨からなります。脊椎と胸骨を結ぶ骨が肋骨です。

肋骨は全部で12対あります。肋骨の付着する部分に関して説明していきましょう。

胸骨は主に以下の3つの部位に分かれています。

  • 胸骨柄
  • 胸骨体
  • 剣状突起
胸骨の名称

この胸骨柄という部位にある第1肋骨切痕に1つ目の肋骨が肋軟骨という組織を介して付着します。その他の肋骨も肋軟骨を介して胸骨に付着することになります。

その下にある胸骨体には第2〜7肋骨が付着します。そのなかでも第2肋骨は胸骨角にある第2肋骨切痕に付着し関節を構成しています。その下第5肋骨まではそれぞれが胸骨体に付着します。

第6、7肋骨は2つの付着部位の間に間隔はほとんどありません。そして、一番下の肋軟骨付着部が第7胸肋関節と呼ばれる関節になります。7〜10番目の肋骨は肋軟骨を介してこの第7胸肋関節と連結しています。

その第7胸肋関節よりさらに下方にあるのが剣状突起です。第7胸肋関節に付着してくる肋軟骨を胸骨弓と呼びます。

剣状突起の両側を頂点にこの左右の肋骨弓がなす角度を胸骨下角といいます。胸骨下角は通常であれば約70〜90°の角度となります。

この胸骨下角が広がっている状態をリブフレアといい、不良姿勢の原因になる可能性があるとされています。肋骨を締める必要がある人はこの胸骨下角が90°以上ある人といわれています。

ちなみに第11肋骨と第12肋骨は胸骨に肋軟骨を介して間接的にもつながっておらず、浮遊肋とよばれます。

呼吸と姿勢を支える肋骨の役割

主な役割は内臓の保護です。

前述したように肋骨は胸郭を構成しています。この胸郭の下方は横隔膜で腹部とは境があります。

肋骨(胸郭)の内部には心臓や肺があります。肋骨はこの内臓を保護する役割を持つのです。

この胸郭と横隔膜の運動によって空気が肺に出入りし呼吸をすることになります。

肋骨は吸う時に膨らみ、吐く時にそれが元に戻ります。この肺に合わせた肋骨の動きが呼吸にとって非常に重要となります。

さらに肋軟骨の場合はGuangzhi Zhangら7)によると肋軟骨を変形させ、胸郭の伸縮に寄与する可能性もあると報告されています。

肋骨を締めるとは?

肋骨を締めるということは前述した呼吸によって動く肋骨の動きを指します

ここで呼吸の際の肋骨の動きをまとめてみましょう。

吸息(息を吸う)

息を吸う時は肋骨が開き胸郭の容積が増加します。これは主に以下の流れで起きる動作になります。

  1. 横隔膜が収縮して下方に移動。それにより、胸郭の内部(胸郭腔)が上下方向に広がる
  2. 肋間筋の収縮で胸郭が挙げられ胸郭腔が側方に拡大する。

これらの動きが2つ同時に起こります。つまり息を吸うと肋骨は上下左右前後に開くのです。このことは、上位肋骨が前上方に動くことをpump-handle motionと、下位肋骨が外上方に動くことをbucket-handle motionといいます。

特に肋骨を締めたいと思う人の場合はリブフレアという肋骨が開いている状態になります。この吸う時に開いた状態がうまく戻らなくなってしまっている可能性があるのです。

呼息(息を吐く)

吸う時に開いた胸郭腔が元の大きさに戻ることで息を吐くことができます。これは主に以下の流れで起きる動作になります。

  1. 横隔膜が緩んで上方へ移動する。
  2. 肋間筋が緩んで胸郭が下方へ移動する。

つまり、吸ったときに入った力が抜けるだけです。ただ吐くだけであれば筋機能は必要ないのです。

しかし、努力的に意識して息を吐く場合は腹筋や肋間筋が機能します。

肋骨を締めるとは

ここまでをまとめると肋骨を締めるということは開いた肋骨下角を元に戻すことになります。そのためには努力的に息を吐く時の肋骨を戻す機能を使う必要があるのです。

呼吸の方法としては腹式呼吸胸式呼吸があります。一般に女性は胸式呼吸の傾向が強いとされています。これは衣服による腹部の締め付けや妊娠時にとくに増えます。

肋骨を締めるには腹式呼吸を使い、肋骨を締める筋肉たちをうまく使う練習をしていく必要があります。具体的に肋骨を締める機能を持つのは以下の筋肉です。

  • 腹直筋
  • 内腹斜筋
  • 外腹斜筋
  • 腹横筋
  • 内肋間筋
  • 最内肋間筋
  • 肋下筋
  • 胸横筋
  • 下後鋸筋

これらの筋は通常の呼吸では働きません。努力的に吐くことで収縮させることができます。

特に重要なのは内肋間筋と腹筋群といわれています。これらの筋をうまく使うことで腹腔内圧が高まり肋骨下角が減少、つまり肋骨を締めることに繋がるのです。

肋骨が開いていると何が悪いのか

肋骨が開いている状態とは前述したように胸骨下角が90°以上ある人です。この状態をリブフレアといいます。

リブフレアになると考えられる悪影響は以下のものです。

  • 横隔膜の機能の低下
  • 横隔膜の機能低下により頚部、肩甲帯での呼吸となり肩こり首こりの原因となる
  • 不良姿勢の原因になる
  • 不良姿勢での運動となり腰痛や膝痛の原因になる
  • くびれが作りにくくなる
  • ぽっこりお腹の原因となる
  • 鳩胸になる
  • 腹腔内圧が高めにくくなり体幹安定性の低下につながる可能性がある
  • 体幹安定性の低下により上下肢の筋出力低下につながる可能性がある

これらの悪影響を予防もしくは改善するために前述した呼気の筋群を働かせる必要があります。

これはあくまで自分で筋を働かせる必要があることが関根 康浩らの報告4)によりわかっています。関根らによると自分で呼気を練習し腹腔内圧を高めた群に比べ、肋骨下角をバンドで他動的に減少させ固定した群は上肢筋力が向上せず腹腔内圧が高まっていなかった可能性が示唆されています。

つまり肋骨を絞めて固定しただけでは締めるような運動をしたときに比べ効果が弱いということです。やはり自分で運動する必要があるということですね。

肋骨を締めるのに有効な運動

一瀬 裕介ら3)によると背もたれつきの椅子で体幹後屈角度60°~90°座位での努力呼気を行うと、寝ている時に努力呼気を行うのに比べて肋骨下角が優位に減少したと報告されています。

つまり背もたれに寄りかかって力強く息を吐くとリブフレアに効果的だということです。

基本的には息を努力的に吐くのがトレーニングとなります5)6)が、さらに腹筋の収縮を加えたほうが効果的ではないかと考えています。

例としては以下のものは効果的になるかもしれません。

  • クランチ+努力呼気
  • シットアップ+努力呼気
  • キャットアンドカウ+努力呼気
クランチ
シットアップ
キャットカウ

まとめ

ストレッチする人

肋骨を締めるというのは肋骨下角の角度を90°以下にしていくものだということがわかりました。これを行うためには主に内肋間筋や腹筋群といった息を吐く筋肉を使うことが重要です。

急激に力を入れると痛みが出る可能性もあるため無理なく少しずつ練習してみましょう。

身体のケアとしてストレッチやトレーニング機器にも興味がある方はこちら2つの記事をご覧ください。

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この記事は横浜・湘南エリアで理学療法士・パーソナルトレーナーとして活動している大内翔太がまとめました。

引用とリンク

1) 中村隆一, 齋藤宏『基礎運動学』医歯薬出版,2013年


基礎運動学第6版 [ 中村隆一(リハビリテーション) ]

2)Donald A.Neumann『カラー版 筋骨格系のキネシオロジー』医歯薬出版,2012年


筋骨格系のキネシオロジー―カラー版 [単行本] Donald A.Neumann、 嶋田 智明; 有馬 慶美

3)一瀬 裕介, 村上 幸士, 荒田 修治, 他:肋骨下角の測定による姿勢と呼吸の関連性.理学療法学Supplement.2008;Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集):セッションID 10

4)関根 康浩, 河原 常郎, 土居 健次朗, 他:肋骨下角減少と上肢筋力との関連.理学療法学Supplement.2015;Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集):セッションID: P3-C-0961

5)宮川 哲夫:呼吸筋トレーニング.理学療法学.1988;15(2):208-216

6)秋吉 史博, 高橋 仁美, 菅原 慶勇, 他:呼気筋強化が呼吸筋力に及ぼす影響.理学療法学.2001;28(2):47-52

7)Guangzhi Zhang, Xian Chen, Junji Ohgi,他:Effect of intercostal muscle contraction on rib motion in humans studied by finite element analysis.Journal of Applied Physiology.2018;125(4):1165-1170

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