肋骨周りってそもそもなんのためにあるの?何をするところなんだろう。
本記事ではこのようなお悩みに答えます。
結論から言いますと肋骨は内臓の保護が主な役割です。また、呼吸で拡大収縮する肺にあわせ動くようになっています。
肋骨は身体の重要な構成要素であり、機能と解剖を理解することは健康な生活と良好な姿勢を維持するために不可欠です。この記事では、肋骨の解剖学と機能について探求していきます。
※本記事はかなりコアな細かい解剖学まで記載しています。深く知りたいかたのみ読み進めてください。
筆者は整形外科クリニックとスポーツジムで勤務している理学療法士×パーソナルトレーナーです。日常的に医学的な知識や健康、トレーニングに関する知識を利用し指導しています。
胸郭(肋骨)の解剖学
肋骨は胸郭のなかの一部です。この胸郭というのは脊椎・胸骨・肋骨からなります。脊椎と胸骨を結ぶ骨が肋骨です。
胸郭は頭部、頚部や上肢に作用する筋の付着部にもなります。
胸椎と連結しているので胸椎同様屈伸動作が制限がありますが、回旋運動には有利な構造となっています。
まず肋骨から説明していきます。
肋骨
肋骨は全部で12対あります。肋骨の付着する部分は脊椎と胸骨になります。肋骨の形は内臓を保護するように12対合わさると籠のような形となります。
肋骨の後端は肋骨頭、肋骨頸、関節結節があります。この肋骨頭や関節結節は後述する肋椎関節と肋横突関節を構成します。
肋骨は脊椎のなかでも胸椎とよばれる胸の高さの背骨に付着しています。この胸椎は屈伸運動が得意ではありません。主に回旋運動(ひねり)を得意としています。
そのため、胸椎に付着している肋骨も同様に回旋運動が得意な運動となります。つまり胸郭はひねりに有利な構造となっているのです。
肋骨には軟骨が骨化した肋軟骨という部分も存在します。12対の肋骨のうち、上の7対は肋軟骨を介して胸骨に付着します。この上位7対の肋骨は真肋といいます。
下5対は直接胸骨につかず、すぐ上の肋軟骨に付着する形をとっておりこの下位5対を仮肋といいます。さらに、仮肋のうち第11,12肋骨は末端が骨に付着しておらず浮肋といわれています。
肋骨はいくつかの関節の構成します。以下がその関節です。
- 胸肋関節
- 軟骨間関節
- 肋椎関節
- 肋横突関節
また、それぞれの肋骨には数多くの筋肉が付着しています。上から順に見ていきましょう。付着する筋が全く同じ肋骨に関してはまとめてあります。
肋骨 | 筋 |
---|---|
第1肋骨 | ・頸前横突間筋 ・前斜角筋 ・中斜角筋 ・胸腸肋筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・鎖骨下筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第2肋骨 | ・短肋骨挙筋 ・胸最長筋 ・後斜角筋 ・胸腸肋筋 ・上後鋸筋 ・外肋間筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 ・前鋸筋 |
第3、4肋骨 | ・小胸筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・上後鋸筋 ・胸腸肋筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・頸腸肋筋 ・胸最長筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第5肋骨 | ・腹直筋(肋軟骨に停止) ・外腹斜筋 ・小胸筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・上後鋸筋 ・胸腸肋筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・頸腸肋筋 ・胸最長筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第6肋骨 | ・腹直筋(肋軟骨に停止) ・腹横筋(肋軟骨に起始) ・外腹斜筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・頸腸肋筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・肋骨下筋 ・胸最長筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第7肋骨 | ・横隔膜(肋軟骨に起始) ・腹直筋(肋軟骨に停止) ・腹横筋(肋軟骨に起始) ・外腹斜筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・胸最長筋 ・肋骨下筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第8肋骨 | ・横隔膜(肋軟骨に起始) ・腹横筋(肋軟骨に起始) ・外腹斜筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・胸最長筋 ・肋骨下筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第9肋骨 | ・横隔膜(肋軟骨に起始) ・腹横筋(肋軟骨に起始) ・外腹斜筋 ・前鋸筋 ・外肋間筋 ・下後鋸筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・肋骨下筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第10肋骨 | ・横隔膜 ・腹横筋(肋軟骨に起始) ・内腹斜筋 ・外腹斜筋 ・外肋間筋 ・胸最長筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・下後鋸筋 ・肋骨下筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第11肋骨 | ・横隔膜 ・腹横筋 ・内腹斜筋 ・外腹斜筋 ・外肋間筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・下後鋸筋 ・肋骨下筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
第12肋骨 | ・横隔膜 ・腹横筋 ・内腹斜筋 ・外肋間筋 ・腰方形筋 ・胸腸肋筋 ・腰腸肋筋 ・下後鋸筋 ・長肋骨挙筋 ・短肋骨挙筋 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 |
肋軟骨 | ・外肋間筋 ・大胸筋胸肋部 ・最内肋間筋 ・内肋間筋 ・胸横筋 |
胸肋関節
上位7対の肋骨の前方の軟骨端と胸骨の両側に外側端で関節を作ります。この胸肋関節は肋骨と胸骨の骨の間に軟骨が存在します。
そのため、正確にいうなら胸肋関節は肋骨肋軟骨結合(肋軟結合)と胸骨肋軟骨結合(胸軟結合)に分けられます。
肋骨肋軟骨結合は肋骨と肋軟骨の結合部のことをいいます。ここには関節包や靱帯はありません。非常にわずかな運動が可能な結合部だと考えられています。
胸骨肋軟骨結合は胸骨の肋骨切痕と肋軟骨内側との間にあります。第1胸骨肋軟骨結合は硬く結ばれており動かないと考えられています。しかし、第2〜7はわずかに滑り運動があると考えられています。この2〜7の動く滑膜性関節は放射状靱帯によって関節包が補強されています。
軟骨間関節
第5〜10肋骨の胸骨側の間は狭く、滑膜で軟骨間関節を作ります。その軟骨間関節を軟骨間靱帯が補強しています。
11〜12肋骨は胸骨についていないのでこの関節はありません。
肋椎関節と肋横突関節
肋骨の背骨側では肋椎関節と肋横突関節で脊椎と連結しています。
肋椎関節は12本の肋骨全てに存在します。肋椎関節では、肋骨頭が2つの隣接する椎骨で作られる一対の肋骨窩とその間にある椎間板に接します。
肋横突関節は第1〜10肋骨の胸椎横突起にあります。肋骨の関節結節面と胸椎横突起上の肋骨関節面(肋横突関節窩)とで構成されています。
胸骨
胸骨は主に以下の3つの部位に分かれています。
- 胸骨柄
- 胸骨体
- 剣状突起
胸骨柄と胸骨体の関節部は膨隆しており胸骨角とよばれます。
胸骨柄
胸骨柄は胸骨体と胸骨柄体軟骨結合で繋がっています。繊維軟骨性の関節であり、加齢とともに骨化していくことが多いです。
胸骨柄の中央上部の頸切痕の両外側に胸鎖関節の鎖骨切痕があります。そこからさらに外側、胸鎖関節直下にいくと第1肋骨切痕がみられます。また、胸骨体との関節部外側には第2肋骨切痕があります。
つまり胸骨柄には以下の骨が付着することになります。
- 胸骨体
- 鎖骨
- 第1肋軟骨
- 第2肋軟骨
肋骨は肋軟骨という組織を介して付着します。その他の肋骨も肋軟骨を介して胸骨に付着することになります。そのため、第1肋骨切痕や第2肋骨切痕には正確には第1、2肋骨ではなく肋軟骨が付着します。
また、胸骨柄に付着する筋肉は以下のものです。
- 胸骨筋
- 胸骨舌骨筋
- 胸骨甲状筋
- 胸鎖乳突筋
- 大胸筋胸肋部
胸骨体
胸骨体には第2〜7肋骨が付着します。そのなかでも第2肋骨は胸骨角にある第2肋骨切痕に付着し関節を構成しています。その下第5肋骨まではそれぞれが胸骨体に付着します。
第6、7肋骨は2つの付着部位の間に間隔はほとんどありません。そして、一番下の肋軟骨付着部が第7胸肋関節と呼ばれる関節になります。7〜10番目の肋骨は肋軟骨を介してこの第7胸肋関節と連結しています。
その第7胸肋関節よりさらに下方にあるのが剣状突起です。
つまり胸骨体には以下の骨が付着することになります。
- 胸骨柄
- 第2肋軟骨
- 第3肋軟骨
- 第4肋軟骨
- 第5肋軟骨
- 第6肋軟骨
- 第7肋軟骨
- 剣状突起
第7胸肋関節に付着してくる肋軟骨を胸骨弓と呼びます。
剣状突起の両側を頂点にこの左右の肋骨弓がなす角度を胸骨下角といいます。胸骨下角は通常であれば約70〜90°の角度となります。
この胸骨下角が広がっている状態をリブフレアといい、不良姿勢の原因になる可能性があるとされています。
第11肋骨と第12肋骨は胸骨に肋軟骨を介して間接的にもつながっておらず、浮遊肋とよばれます。
また、胸骨体に付着する筋肉は以下のものです。
- 大胸筋胸肋部
- 外腹斜筋
- 胸横筋(最内肋間筋)
剣状突起
胸骨剣結合によって胸骨体の下についているのがこの剣状突起です。腹筋の付着部位となっています。
剣状突起に付着する骨は胸骨体のみです。
剣状突起に付着する筋は以下のものです。
- 胸横筋
- 横隔膜
- 腹直筋
脊椎
脊椎の中でも胸郭を構成する部位、肋骨が付着する部位は胸椎となります。
胸椎は12個あります。英語ではthoracicといいます。そのため例えば第6胸椎を指す場合はT6やTh6ということも多いです。
胸椎は生理的に後弯しています。前側の凹は胸腔や骨盤腔に入る臓器をいれるための空間をつくっています。
胸椎は骨の形状から屈伸は苦手で回旋が得意な部位となっています。胸椎はT2-T9はほぼ同じ特徴です。T1,T10-12はそれと比べやや特殊な形状をしています。
T2-T9(典型的な胸椎)の特徴
T2-T9にはそれぞれ第2〜9肋骨頭が付着します。上関節面は平面ですが、ほとんど後方に向きます。下関節面も平面ですが、上とは逆にほとんど前方に向いています。
棘突起は長く尖っている形状で、下方に傾斜しています。
横突起は水平ですが、わずかに後方へ突き出しています。肋骨結節に接する横突肋骨窩があります。
椎弓板は短く厚いです。下方に傾斜する棘突起のために幅広い起始部を作っていると考えられています。
T1,T10-12(非典型的な胸椎)の特徴
第1胸椎(T1)は第1肋骨が付着する突肋骨窩と第2肋骨が付着する肋椎関節があります。
第10〜12胸椎(T10-12)にも肋骨窩があります。
上下関節面や棘突起に関しては典型的な第2~9胸椎と同様の形状となります。
肋骨の機能
肋骨は前述したように内臓の保護を重要な機能としてもっています。肋骨の中でも胸骨側につく肋軟骨は衝撃を受けた時の緩衝作用としても重要です。
また、呼吸時の肺の動きに合わせて動くようにもなっています。以下にまとめていきます。
息を吸う時の肋骨の動き
息を吸う時は肋骨が開き胸郭の容積が増加します。これは主に以下の流れで起きる動作になります。
- 横隔膜が収縮して下方に移動。それにより、胸郭の内部(胸郭腔)が上下方向に広がる
- 肋間筋の収縮で胸郭が挙げられ胸郭腔が側方に拡大する。
これらの動きが2つ同時に起こります。つまり息を吸うと肋骨は上下左右前後に開くのです。このことは、上位肋骨が前上方に動くことをpump-handle motionと、下位肋骨が外上方に動くことをbucket-handle motionといいます。
特に肋骨を締めたいと思う人の場合はリブフレアという肋骨が開いている状態になります。この吸う時に開いた状態がうまく戻らなくなってしまっている可能性があるのです。
息を吐く時の肋骨の動き
吸う時に開いた胸郭腔が元の大きさに戻ることで息を吐くことができます。これは主に以下の流れで起きる動作になります。
- 横隔膜が緩んで上方へ移動する。
- 肋間筋が緩んで胸郭が下方へ移動する。
つまり、吸ったときに入った力が抜けるだけです。ただ吐くだけであれば筋機能は必要ないのです。
しかし、努力的に意識して息を吐く場合は腹筋や肋間筋が機能します。
この強く息を吐いて肋骨を締めていく動きを意識する運動としてはピラティスが代表的でしょう。肋骨を締めることに関しては以下の記事をご覧ください。
肋骨の異常と疾患
肋骨自体の異常となると主なものは骨折です。その他肋骨の動作など関連するものとしては呼吸器障害が主なものとなります。
そのほか関連するものというと主に呼吸器疾患です。まずは以下に代表的な肋骨周囲の異常や疾患を簡単にまとめます。
- 肋骨骨折
- 閉塞性換気障害
- 拘束性換気障害
- 慢性呼吸不全
肋骨骨折
先述したように肋骨自体の異常というと骨折となります。衝撃による骨折だけでなく肋骨では咳やくしゃみのしすぎによる疲労骨折も起こりやすいです。
また、ゴルフでもスイングによる肋骨骨折が生じることがあるとされています。
予防が困難な状況で起こることが多く、骨折してしまった場合は固定による安静が第1選択となります。
閉塞性換気障害
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のことを主に指すかと思います。日本呼吸器学会によると以下のように定義されています。
タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病
一般社団法人 日本呼吸器学会 呼吸器の病気 B. 気道閉塞性疾患
危険因子としては喫煙が最重要となります。
症状は非常に多く以下のようなものが挙げられます。
- 労作時呼吸困難
- 慢性的な咳や痰
- 全身性炎症
- 栄養障害
- 骨格筋機能障害
- 心血管疾患
- 骨粗鬆症
- 抑うつ
肺高血圧や肺がん、気胸を合併することもあるといわれています。
肋骨としては胸郭の前後径が腫脹および増大すると言われています。つまり肺が過剰に膨張して肋骨が開いている状態です。
治療法としてはまず症状の管理が必要です。COPDの管理目標は日本呼吸器学会によると以下のようなものが挙げられています。
COPDに対する管理の目標は、(1)症状および生活の質の改善、(2)運動能と身体活動性の向上および維持、(3)増悪の予防、(4)疾患の進行抑制、(5)全身併存症および肺合併症の予防と治療、(6)生命予後の改善にあります。
一般社団法人 日本呼吸器学会 呼吸器の病気 B. 気道閉塞性疾患
治療は禁煙指導、薬物療法、非薬物療法があります。それらを組み合わせて前述した管理目標を達成していくことになります。
とくに喫煙が最大の危険因子です。禁煙がCOPDの経過に最も大きな影響力があるといわれています。
受動喫煙もCOPDの発症や増悪要因となるため、COPD患者周囲のすべての喫煙者に禁煙指導を行うべきでしょう。
拘束性換気障害
本項目では間質性肺炎を紹介いたします。
間質性肺炎は肺胞隔壁を炎症、繊維化の疾患の総称です。全身性疾患の影響で発生する場合や原因不明の特発性間質性肺炎があります。
主な症状は乾性咳嗽(がいそう)と労作時呼吸困難です。つまり咳と動いた時の息苦しさになります。
治療としては以下のものが重要です。
- 生活の質の改善
- 薬物療法
- 在宅酸素療法
- 呼吸リハビリテーション
- 肺移植
- 合併症の管理
COPDと同様禁煙が重要です。また、金属や木の粉塵などの多い環境も間質性肺炎の発症リスクとなります。職場でこういった原因となる場にいることが多い人も少なからずいることでしょう。その際は配置換えや場合によっては転職も必要となるかもしれません。
慢性呼吸不全
呼吸不全とは日本呼吸器学会によると以下のように定義されています。
動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下になることを呼吸不全と定義しています。二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合(45mmHg以下)をI型呼吸不全、45mmHgをこえる場合をII型呼吸不全と呼びます。このような呼吸不全が1か月以上続く状態を慢性呼吸不全といいます。
一般社団法人 日本呼吸器学会 呼吸器の病気 H-02. 慢性呼吸不全
慢性呼吸不全となる原因の疾患は以下のものが挙げられます。
- COPD
- 肺結核後遺症
- 気管支拡張症
- 間質性肺炎
- 側弯症
- 神経筋疾患
- 肺がん
治療としては以下のものです。
- 原因疾患コントロールのための薬物量量
- 呼吸リハビリテーション
- ワクチン接種
- 栄養管理
- 禁煙指導
- 酸素療法
- 在宅人工呼吸療法
健康的な肋骨機能の維持方法
前述した疾患にならないように健康的な機能を維持する必要があります。そのためには主に禁煙、運動が有効だとされています。
禁煙
禁煙は呼吸機能低下を抑制します。禁煙に関する理解は機能維持に最も大きな影響力があるといえるでしょう。
また、COPDの項目でも記載しましたが受動喫煙も機能低下の原因となります。そのため全ての喫煙者に禁煙指導を行うべきでしょう。
しかし、喫煙習慣はニコチン依存である可能性もあり喫煙者自身の理解度が重要となるでしょう。禁煙指導に関しては禁煙に至るまでの行動変容のステージというのがありますので参考程度にご覧ください。
①無関心期 | 6ヶ月以内に禁煙しようと思わない |
②関心期 | 6ヶ月以内に真剣に禁煙しようとしている |
③準備期 | 30日以内に禁煙することを計画している 過去1年間に1回以上の禁煙を試みたことがある |
④実行期 | 禁煙中であるが6ヶ月経っていない |
⑤維持期 | 6ヶ月以上の禁煙を継続している |
禁煙治療は行動療法と薬物療法を並行して行います。
行動療法の喫煙欲求のコントロールとしては行動パターン変更法や環境改善法、代償行動法が挙げられます。
一方薬物療法はガムやパッチのニコチン置換療法や非ニコチン製剤としてバレニクリンというものがあります。
また、気管支拡張薬によって症状の軽減、増悪の予防を図ることもあります。
運動
運動としてはすでに症状があるかたは呼吸リハビリテーションとして行うことや、症状がないかたであれば予防的に自ら運動習慣を身につけていくことが必要です、
運動内容としては胸郭の柔軟性や拡張性の改善を図る体操、呼吸をする筋肉の強化、全身の筋肉のトレーニング、運動耐容能の改善を図る有酸素運動などを行います。
筋トレの運動強度は1RMの30〜50%程度が推奨されています。そのため高強度のトレーニングは推奨されていません。出来れば10〜15回を週2〜3回程度行うといいと考えられています。
さらに日常生活動作(ADL)上で息切れをする動作に近い運動を取り入れて行うと生活に結びついた運動として有効となる可能性があります。
また、すでに重症であれば運動よりも体調を整えるコンディショニングやADLのトレーニングが中心となります。
運動に関してはある程度の症状が生じると一時中止をする必要があります。具体的には以下の例です。
- 呼吸困難感がきついレベル
- 胸痛、動悸、めまいの出現
- 心拍数がHR maxの85%(肺性心を伴う場合は60〜70%)
- 呼吸数が30回/分以上
- SpO2が90%以下
まとめ
かなりコアな内容でまとめました。基本的に胸郭、肋骨周囲の機能は呼吸に関連することが多いです。しかし、胸郭が硬くなると胸椎の硬さが生じるため腰や首、さらには全身的な影響を引き起こす可能性があります。
そのため、硬くならないように普段から禁煙や運動を行うことは生活の質を良くするためには重要となるでしょう。
また、呼吸の状態に関してはすでに状態が悪くなっているかたは近隣の病院、クリニックに相談のうえ薬物療法や酸素療法、外科療法などが必要となるかもしれません。
身体のケアとしてストレッチやトレーニング機器にも興味がある方はこちら2つの記事をご覧ください。
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この記事は横浜・湘南エリアで理学療法士・パーソナルトレーナーとして活動している大内翔太がまとめました。
引用とリンク
1) 中村隆一, 齋藤宏『基礎運動学』医歯薬出版,2013年
基礎運動学第6版 [ 中村隆一(リハビリテーション) ]
2)日本呼吸器学会
3)細田多穂,山崎裕司,川俣幹雄,他『内部障害理学療法学テキスト』,2022年
内部障害理学療法学テキスト(改訂第4版) [ 細田多穂 ]